Introduction of Tribology

Tribology(トライボロジー)とはギリシャ語の"tribos"(摩擦する)をもとに作られた用語で、「相対運動をして相互に影響しあう二表面、ならびにそれに関連する諸問題と実際についての科学と技術」と定義されています。平たく言えば「表面・接触・摩擦・摩耗・潤滑を取り扱う学問分野」のことで、モノとモノが接触するあらゆる場面にかかわってくる応用範囲の広い学問です。



たとえば我が国の基幹産業である自動車産業においてもトラ イボロジーは重要な役割を担っています。現在、地球環境保全のため、自動車からの排出される二酸化炭素の削減を目指してさまざまな取り組みが行われており、その一例としてハイブリットシステムなどのエネルギー効率の良い動力源の開発が良く知られています。しかし更なる低燃費を目指すためには、動力源の開発だけでなくエンジン内部および駆動系における摩擦によるエネルギーの伝達ロスの低減が重要な課題となってきています。

またトライボロジーは情報産業においても必要不可欠な技術と なっています.近年の情報化社会の進展の背景として、ハード ディスクの記憶容量の増加と読み取り速度の向上があげられます。しかしハードディスクの性能向上に伴いヘッドのディスク に対する浮上高さが極めて小さくなってきており、接触による 表面損傷が問題となっています。そこで、ディスク表面に潤滑保護膜を作るなどのトライボロジーの研究成果を応用した対策 がとられ、ハードディスクの耐久性を向上させるのに役立っています。

このようにトライボロジーは、様々な産業においてさらなる発 展に必要なキーテクノロジーとして重要視されています。これ は技術の発展に伴い、従来の「形の設計」だけでは得られない高機能・高性能を実現するために「表面の設計」の必要性が高 まってきた結果であると言えます。

物体表面におけるあらゆる現象を理解するためには、物理学、化学、材料学、弾塑性学、破壊力学、流体力学、熱力学などの さまざまな学問が必要となります。トライボロジーはあらゆる知識を総動員し、さまざまな分野で役に立つ基盤技術の開発を 目指す、いま最も発展が期待される学問のひとつと言えます。